| ■ 個人投資家の株式譲渡益と配当にかかる税制改正についての提言 |
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| 政府税制調査会と財務省において、2008年末までの時限措置となっている譲渡益課税ならびに2008年度末までの時限措置となっている配当課税についての軽減税率10%を本則の20%に戻す方向での議論が行なわれているものと報ぜられています。
一方、金融庁は「家計資産の貯蓄から投資への流れはいまだ道半ば」として、譲渡益への優遇は再延長、配当課税については税率10%の恒久化を主張していますが、公明党や野党民主党の理解は得られていない状況です。
しかしながら、このような方向での個人株式投資に対する実質増税は、個人金融資産の「貯蓄から投資へ」の動きを逆行させるだけではなく、企業の国際競争力強化に向けての法人税率の引下げの方向とも完全に矛盾する税制改悪であるものと判断されます。
当協会としては、このような観点から、譲渡益課税と配当課税のあり方について次のとおり提言します。
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特定非営利活動法人 日本個人投資家協会 理事長
長谷川慶太郎 |
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提言
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- 上場株式の譲渡益課税については、他の金融商品果実との損益通算拡大などを盛り込んだ金融商品一体課税が実現するまでの間、現行の税率10%を継続する。合わせて、個人投資家層拡大の見地から、年間譲渡益50万円を限度に課税免除とする。
- 配当課税については、企業の国際競争力強化と二重課税回避の観点から、恒久税制としては、無税とすることが望ましいが、さしあたり当面は、現行の軽減税率10%を時限措置ではなく、制度化する。
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提言の根拠
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- 譲渡益課税
政府がスローガンとして掲げている「貯蓄から投資へ」の誘導策は、現金や預貯金の形で眠っている個人の金融資産を株式市場へ向かわせ、わが国の経済成長力を高めるのに役立つものと受け止められてきたが、下記のとおり現実にはこのような投資への動きは一向に進捗していない。
サブプライム問題で株価が急落し市場が一段と冷え込んでいる状況下で、税率を10%から20%へ引上げることは、政府が掲げたスローガンに矛盾するものであり、一段と個人の株式への投資意欲を萎縮させるものと懸念される。
(1)下表1の個人株式保有額推移から明らかなとおり、個人金融資産に占める株式投信を含む株式保有の比率、株式時価総額に占める個人保有分時価(投信経由分を含む)の比率ともに趨勢的に増加に転じたものとは判断できない。
家計の金融資産に占める株式(投信経由を含む)の比率は2006年3月には8.9%と過去10年間の最高を記録したが、これは株価の上昇要因のみによる増加であって、保有量は増加していない。一方、東証時価総額に占める個人の保有比率は2003年以降コンスタントに減少している。
(2)株式投信はこのところ急増して残高も60兆円を超えたが、株式への投資は投信残高の40%以下で、外国株式への投資が10兆円を超え、国内株式への投資が15兆円程度に留まっているのと対照的である。運用成績も不振につき今後とも着実に伸びるものとは期待できない。
(3)個人による株式の売買シェアは増加しているが、これはデイトレーダーなどの短期売買の活況によるものであって、個人の株式長期保有には繋がっていない。
(4)国際比較で見ても、表2のとおり、個人の株式保有は個人金融資産総額の7%、証券資産合計でも14%と低く、米国の1/4、独・仏の1/3程度の低い水準に留まっている。この格差が近年大幅に縮小したとは推測できない。各国ともに表3に示したような個人の株式長期保有を勧奨するための優遇策を講じており、このような優遇策がないのはひとりわが国のみである。
バブル崩壊以降、東京株式市場は欧米の株式市場に大きく水を開けられ、最近では株式譲渡益に課税しないアジア市場からも肉薄されている。このような国際競争下にあって,東京市場を育成強化するには、個人投資家層の厚みを増すための不断の努力が不可欠である。
上述のような状況から総合判断して、長期的には全金融資産についての一体課税を否定するものではないが、損益通算の範囲が極めて限定的である現状下においては、リスクの高い株式投資については10%の軽減税率の継続が不可欠である。
金融資産についての一体課税に当たっては、当然のことながら、預貯金だけではなく、金融商品取引法が対象とするすべての金融商品の譲渡損益について同率一体課税とし、5年間程度の損益通算が認められるべきである。
加えて、本年4月に施行された金融商品取引法により、高齢者などは投資戦略を自ら勉強せざるを得なくなったので、一体課税に合わせて、分離課税となる金融所得についても年間50万円以下の証券等譲渡益については無税とする措置が望まれる。これは所得を得るための費用実費として所得からの控除が認められている個人所得税における給与所得控除(最低65万円から年収の5%+170万円まで)に照合する性格のものである。
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表1.個人の株式保有額とその家計金融資産ならびに東証時価総額に占める割合の推移
(単位:兆円)
各年 3月末 |
個人の国内上場株式 保有額(うち投信分) |
家計の金融資産 |
東証時価 |
| 総保有残高 |
株式の比率 |
総額 |
個人保有比率 |
| 1998/3 |
66.9 (4.7) |
1,286.7 |
5.2% |
300.8 |
22.2% |
| 1999/3 |
71.8 (4.6) |
1,328.0 |
5.4% |
323.8 |
22.2% |
| 2000/3 |
103.0 (10.6) |
1,401.3 |
7.3% |
458.8 |
22.4% |
| 2001/3 |
82.2 (8.7) |
1,388.9 |
5.9% |
350.6 |
23.4% |
| 2002/3 |
74.0 (8.7) |
1,373.5 |
5.4% |
305.7 |
24.2% |
| 2003/3 |
59.2 (7.6) |
1,355.9 |
4.4% |
232.8 |
25.4% |
| 2004/3 |
91.3 (10.1) |
1,409.3 |
6.5% |
363.0 |
25.1% |
| 2005/3 |
94.0 (9.8) |
1,429.4 |
6.6% |
377.0 |
24.9% |
| 2006/3 |
133.1 (15.1) |
1,502.4 |
8.9% |
563.3 |
23.6% |
| 2007/3 |
123.6 (15.1) |
1,533.4 |
8.1% |
559.3 |
22.1% |
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出所:日銀・資金循環表CSUデータ、株式投信の株式保有額については投資信託協会・
統計データ(株式-外国株)、東証時価総額は東証データ
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表2.個人金融資産に占める株式・出資金、投資信託、債券保有額の国際比較(2001年)
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国民一人当たりの金融資産 |
個人金融資産種類別の比率 |
| 株式・出資金 |
投資信託 |
債権 |
証券資産合計 |
| 日本 |
1,148万円 |
7% |
2% |
5% |
14% |
| 米国 |
1,494万円 |
34% |
15% |
10% |
59% |
| 英国 |
909万円 |
14% |
5% |
2% |
21% |
| ドイツ |
523万円 |
18% |
12% |
10% |
40% |
| フランス |
620万円 |
32% |
9% |
2% |
43% |
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出所:日本銀行調査統計局広報誌「ニチギンクオータリー」2003年春季号
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表3.欧米諸国の個人株式長期保有についての優遇策
| 米国 |
英国 |
ドイツ |
フランス |
@12ヶ月超の長期キャピタル・ゲインについて、5%または15%の軽減税率(原則は総合課税)
AIRA(個人退職勘定)及び確定拠出型年金への拠出金に対する所得控除、運用益非課税などの優遇制度あり
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ISA(個人貯蓄口座)内の有価証券から生じる配当、利子及びキャピタル・ゲインは非課税。
ISAへの年間預入限度額は8,500£(maxi ISA、約170万円)又は3,000£(mini ISA、約60万円)
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原則非課税
投機的売買(12ヶ月未満)等の場合は総合課税、ただし512ユーロ(約7万円)の非課税枠あり
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@年間15,000ユーロ(約206万円)まで非課税、超過分は申告分離課税(27%、
8年超保有の場合には11%)
APEA(株式貯蓄計画)内で再投資される配当は非課税。キャピタル・ゲインは保有期間に応じて非課税等の優遇措置あり
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出所:平成18年8月作成。金融庁「平成19年度税制要望項目」ほか。
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- 配当課税
上場企業にとっての資金調達コストは、社債等を含む借入コストが年1.6%程度、配当コスト(配当支払総額÷自己資本の総額)が年1.8%程度と推測され、表面上は大差がない。ところが、配当は法人税40%弱を支払った後の税引後純益から行なわれ、さらに支払時に現在では10%の源泉課税が行なわれるため、株主のネット手取り配当1万円を支払うには、2万円の経常利益計上が必要となる。この結果、自己資本の実質コストは借入れコストの2倍以上となっている。
配当に対する二重課税については、かねてから議論されているところであるが、法人段階と株主利益段階の課税を一体として捉える必要がある。前者を40%から30%へ引下げ、後者を10%から20%に引上げるのであれば、配当を行なっている企業の負担はあまり変わらないものの、配当重視の優良企業に対する逆インセンティブとして働くおそれがある。この際は、法人税率の引下げよりも、配当企業・個人株主双方にプラスとなる配当課税を10%から0%に引下げる改正が望まれる。
先進諸国の税制においても、表4のとおり法人段階との二重課税回避のために、配当所得への課税は1/2に軽減するなど、配当所得には通常所得に比して何らかの優遇措置が講ぜられている。
これらの観点から、配当所得に対し他の預金利子など金融商品果実に対すると同一の税率を適用することには問題がある。配当については無税化が筋であるが、経過措置として最低10%の税率据え置きが妥当である。
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表4.配当課税についての国際比較
| 米国 |
英国 |
ドイツ |
フランス |
| 原則、総合課税ただし、5%、15%の軽減税率適用あり |
原則、総合課税(インピュテション方式による控除あり、配当所得には10%または32.5%の軽減税率を適用) |
原則、総合課税ただし、配当所得は1/2に軽減 |
原則、総合課税ただし、配当所得は1/2に軽減 |
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出所:平成18年8月作成。金融庁「平成19年度税制要望項目」。
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